中目黒マンションのリノベーション

フルリノベーションをされ売り出されていたのですが、正直まったくセンスがないごくごく普通かそれ以下の状態でした。最初からリノベーションをするつもりだったのでそこはどうでも良く幸いにも基本的な設備であるキッチン、バス、トイレは奮発したと思われ、なかなか良い商品が入っていました。これはついてる。キッチンはパナソニック製でしたが、浄水器はもちろん食洗機が導入されていて申し分なし。バスも新品で綺麗。トイレはアラウーノで自動開閉付き。それらの位置はもちろん動かしてしまうとコストがかさむので位置は変えずに。そんな状態からリノベーション計画が始まりました。

■間取りを考える


販売していたときの状況を見てみるとかなり小分けに部屋を作っていて4LDKの状態になっていました。当時のライフスタイルから考えると無駄に部屋が多く使い勝手が悪い。ということで広ーいLDKを作って部屋は2つにして2LDKの状態にしました。夫婦二人とワンコ(当時は2匹)で住むには丁度良い間取りです。小さい部屋は5.5帖程度で、仮に子どもが一人いる家族でも問題なく暮らせる間取りです。子どもの居ない世帯で考えれば5.5畳のWICがあると思えば収納も問題なしです。

実際、ガチャ柱で可動式のハンガーパイプを壁に設置し、中央にラックを置くことで収納力抜群のWICが出来上がりました。今だったら工夫次第でリモートワーク部屋と収納を上手く組み合わせることもできるかもですね。
玄関横にかなりのスペースの納戸もあるのでキャンプ用品的なものはそこへ収納が可能でしたのでこのWICは衣類とパントリー的な役割をしていました。

もうひとつの小部屋はベッドルームとし大きい窓が日当たりが良いのですがすがしい起床ができます。

LDKは2つの部屋を取っ払い、元々のLDKと一体化させ26帖の広さを実現させました。広いリビングがほしい!という気持ちももちろんあったんですが、地域の特性から将来的なリセールバリューを上げることを考えてもこういった間取りは非常に合っていると考えました。

■インテリアデザインを考える

元々は当時グラマラスの森田恭通さんが手がけるもののような、重厚でセンスの良いゴージャス感というのが念頭にあって、HDDを漁って当時のマンション探しの資料とかイメージ画像を見るとそういったテイストの物件やイメージがたくさん出てきました。臨海地域のタワマン的な方向性だったんだなーとつくづく思います。

でも、マンション購入後のリノベーション用のイメージ画像を見てみるとガラリと変わっているのです。物件自体がとても日当たりが良かったのでそれを活かしたデザインを基本として考えていく事にしたのです。

昔からお付き合いのあるインテリアデザイナーとタッグを組んで自分たちのイメージを具現化してもらうことになりました。当時はまだまだ建材の知識がないのでイメージを伝えそれに合った建材やそれに変わる別の建材の提案をしてもらいました。

当時の資料を見てみるとある物件の資料がたくさんあることに気付きます。
1つ目は2008年に竣工された福岡にあるDUO EAST&WESTという物件。コンクリート打ちっぱなしの物件ですが注目すべきはそこではなく、白を基調とした空間作り。床は磨きタイルを使用し備え付け家具もバスも洗面も全て白。そこにアクセントとしてガラスブロックの壁。このあたりのテイストを基準に他の画像はタイルの使い方の資料がいっぱいでした。

2つ目はずいぶん前に閉店してなくなってしまったのですがラーメン業界で初のミシュラン一つ星を獲得したことで有名な森住康二さんのMIST表参道ヒルズ店を参考にした部分があります。厨房のステンレスとの白タイルと黒天井のコンビネーションです。壁は白いサブウェイタイルなのですが4辺にテーパーをつけ陰影が出るタイプの物でとても気に入っていたので何処かで採用しようと思いました。

■LDKを考える

キッチンはパナソニック製の物が入っていたのですが如何せんそのままの見た目では生活感が出すというのと、背面側への収納がなかったのでちょっと不便。そこでステンレスを使って収納を増設して囲い込むことでカウンター風にしてキッチンをシンプルにかつLDKの中でちゃんとアクセントになるようにしました。そしてペニンシュラ I型キッチンの壁側は気に入ったサブウェイタイルを採用するつもりでしたが、デザイナーさんが二丁掛けテーパーの白タイルを探してくれて(現在は廃盤)平米価格もサブウェイタイルよりも安かったのでそのタイルをに採用しました。

キッチン近くにはLDKに関連する照明やシーリング、ドアモニター、給湯器のスイッチ類を全てまとめています。壁側の収納は冷蔵庫スペースとオープンの収納。収納は耐水性に優れたメラミン化粧板を採用し、炊飯器やレンジミキサーなど調理器具を置けるようにしています。


白を基調とした空間作りの中で色々と悩んだのはやはり床です。LDKの床の素材を何にするか?白いフローリングにした場合、ホワイトオークなどが考えられますがちょっと主張しすぎで北欧風とかそっち方向はイメージが違うなと…。ワンコもいるのでフローリングは滑ってあまりよろしくない。今でこそペット用の滑らないフローリングはたくさんありますが、以外と平米が高い。参考にしたデザインでは白の磨きタイルを使用していて無機質な感じがとてもよいのですが平米価格がなかなかコストがかかる。そこで提案されたのが、「塩ビタイル」で柔らかいフカフカした物ではなく硬質でマットなちょっとオフホワイトな物でした。硬質でマットな質感なのでヒタヒタした歩き心地があり、掃除もしやすい傷にも強い、寝っ転がると意外と気持ちよかったり。無機質に見えるけど使いやすい素材です。この物件に使ったものはABC商会のA-5001SC。廃盤となるという事で在庫限りを格安で手に入れたものですが、今は色々なフロアタイルが出ているので選択肢がいっぱいあります。商品によって質感やクッション感がずいぶん違うので実際に踏んでみて好みを見つける事になると思います。
今日本でも増えてきましたが中国やアジア地域ではSPC床材が多く使われています。実際現在作っている物件ではSPC床材を採用しています。こちらも硬質な質感なんですが商品によってかなりクッション性が違うので色や質感だけでなく踏んだときのクッション性が好みの物かというのが重要ですね。

LDKは天井を黒にすることで古いマンションの天井の低さを黒にすることで圧迫感を無くすことができます。天井は黒いクロスでリリカラのLW-4402を使用しています。黒いクロスはつなぎ目が気になるところなのですが、細かい模様のシンプルな商品なので気になりづらいものとなっています。
そしてベランダ付近の窓前はワンコ用にモザイクタイルで床を作り、トイレを置いたりグルーミングができるスペースとして清潔感を保てるようにしました。

壁には収納力のある本棚を白メラミンで作って陰影で立体感を演出。本等で埋めても良し、空間を活かしてディスプレイするのも良し、棚板がダボで稼働するのでかなり自由度のある使い方ができます。

LDKの反対側はこちらも収納たっぷりのTV台。ここは木目のダイノックで什器を製作。LDKのこちら側は木目を少し出しています。65型ぐらいまでのTVは置けるようにし、スピーカーやアンプ、デッキ、ゲーム機、インターネット関連の機器も収納可能。見えない所にLANやコンセントがあります。TV部分は車輪が付いていて前に出すことができるので配線も見えない所で全て接続できます。反対側の天井には小型スピーカーが設置してあり、前方のTV台までスピーカーケーブルが来ていますのでアンプさえ対応していれば5.1ch等のサラウンドスペースも簡単にできます。趣味がゲームや映画鑑賞の方には使いやすい仕様になっています。そして、キッチンが丸見えにならないように仕切りを付けているのですが、ガラスブロックを使っているので狭く見えないようにしています。

26帖のリビングは白を基調に日当たりの良い明るい空間にしつつもステンレスと木目で少しだけアクセントを入れて表情を付けています。ソファやテーブル、ダイニングの使い方で如何様にも演出できる自由度が高いLDKです。

■廊下、水回りに磨きタイルを使いたい


玄関からLDKまでの廊下、洗面所は絶対に磨きタイルが使いたい!という思いがありここだけは譲れなかったのです。何故かというと、海外のホテルみたいに風呂上がりヒタヒタと裸足で歩くあの感覚を自宅でも味わいたかったからです。
しかし、磨きタイルは高い…でもLDKを塩ビタイルにしたことでこっちに予算が回せる!ということもあり、ここは奮発して磨きタイルにしようと…あまり模様があからさまに付いていないほぼ白の商品を探して光沢感の綺麗なADVANのセラミカギヤマンテ300のBBT301P3(この色は廃盤)を採用しました。

トイレと洗面、洗濯機スペースはこぢんまりしていたのでトイレの壁を無くして、こちらも海外のホテルのように、一体化させることで逆に清潔感もあり、スペースに余裕も出てきます。洗面はシンプルに構成はしつつもモザイクタイルを採用することで白い中に表情を付けています。
ミラーボックスや洗面ボウルはサンワカンパニーのものを採用してコストを抑えています。
最低限の設備ですがアルミで電動歯ブラシ等も置けるような台とS字フックがかけられるバーがあり、ドライヤーなどをかけたりする事もできます。美容室感覚で使い勝手が良いです。

■ベッドルーム

ここは、ほぼベッドで隠れてしまうし、TV台やドレッサーも置くので床は元から張ってあったリクシルのフローリングを補修入れて張り替えはしませんでした。
デザイナーさんの提案でアクセントクロスとしてテシードの輸入クロスを貼りました。これが結構効いてますね。

ちなみにですが、ドアは新しいものではなく元々付いていたパナソニック製のドアに白のダイノックで加工を入れています。それで全てのドアを真っ白にしました。

■マンションのリノベーションとは…

結果的に暮らしやすく、広いリビングのおかげでリッチな気分も味わえる、自分たちの中では非常に上手くいったリノベーションでした。
広さはそこそこあるものの、やはり平面での導線を考えるので非常にやりやすく限られた予算の中でも思ったようにできました。もちろん変えられない躯体の位置があるので、制約が多い分、考えることが絞れるというのもマンションの良いところです。また、この物件がとてもシンプルな形状をしていたというのも大きいですね。
この先、店舗デザイン等もいくつか手がけるのですがこのリノベーションは大きな転機といえます。

ただ、戸建てはこうはいきません…ここから数年後、戸建ての難しさを痛感することになります。

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